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# 違う意味での「バイリンガル」について
はじめまして、独・英・日の通訳・翻訳を担当しております イコ と申します。

私はドイツ人の父と日本人の母の間に生まれました。一般的に「ハーフ」と言われる類に入ります。ハーフと聞いて日本の多くの方が想像するのは、風貌は両親からいいところをもらって、「かわいい・きれい」もしくは「ハンサム」。その上、日本語と英語を両方喋れる、いわゆる「バイリンガル」な人でしょう。一方の親の国籍に関係なく、日本語のほかに話せる言語は大抵、英語と考えられています。仕方がないことかもしれませんが。

話を私自身に戻しますと、ルックスはともあれ、言葉に関して言うと、私はバイリンガルではありません。非常に残念なことです。私はドイツで生まれ、ドイツ語の環境で育ちました。日本語は全く分かりませんでした。(大学に入って「日本学」の一環として日本語を学びましたが、大変苦労しました)。

さて、バイリンガルの語源をたどると、ラテン語のbi=「二つ」、lingua=「舌、言葉」という二つの形態素からできています。

「舌」という単語を「味覚」という意味で解釈しますと、私もバイリンガルです。大人になって骨を折って日本語を覚えなければならなかったのですが、私の味蕾は幼いころから両方の味、つまり両方の食文化を何の苦なく覚えました。

味覚というものを引き出しに例えれば分かりやすいと思います。和食の場合、その引き出しの中には出汁・醤油・みりん・味噌などといった調味料が入っています。ドイツの食べ物の味付けはベースに塩とこしょうがあり、タイム・ローズマリン・ディル・エストラゴン・バジルなどといったハーブをよく使います。日本の出汁の代わりになるのはブイヨンでしょうか。また、バターや生クリームもよく登場します。

和食の「モノリンガル」(一つの味覚のネイティブ)でも、例えレシピがなくても、自分の舌が記憶しているみりんや醤油を、目分量で使ったり、少し足したり、減らしたり、砂糖を加えてみたりできます。豚の角煮など作ったりします。私はタイ料理が大好きですが、タイ料理の基本となる香辛料のそれぞれの味・用途・配合・分量・組み合わせた時の味の変化などについては、まったく分かりません。要するに私にはタイ料理の調味料は使えません。引き出しの中身が謎だからです。中華やインド、世界のほぼすべての料理についても同じことが言えます。

「バイリンガル」の私は、両方の引き出しを開けて中身の調味料を頭の中で組み合わせることができます。それはものすごい強みだと思います。私は木苺のジャムとマスタードのサラダドレッシングの隠し味にお醤油を少し垂らすという冒険ができます。大胆に いぶりがっこ にクリームチーズを乗せてみます。両方の引き出しの中身を自由自在に使い、組み合わせて使いこなせています。食生活がとても豊かになり、楽しくもなります。

大変難しいことですが、言葉は大人になってから必死に努力して勉強すれば覚えることはできますが、大人になってから知らない味覚を身に付けるのはもっと難しいことではないでしょうか。自分を「食のバイリンガル」に育ててくれた母に感謝しています。
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